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熊本イチゴ新品種「ゆうべに」誕生 9年の歳月をかけた熱き想い

毎年5000種もの苗を育てて4年
まずは5品種に絞り込む

「ゆうべに」の研究開発が始められたのは、平成17年のこと。前年には熊本イチゴのオリジナル品種「ひのしずく」が誕生し、市場で高い評価を獲得して、ますます熊本イチゴへの期待が高まりました。そこで熊本県では「ひのしずく」と並ぶような独自のブランドで新たな特徴を持ったイチゴ新品種の開発に着手しました。
熊本県農業研究センター 田尻一裕さん
ゆうべにの苗
新品種イチゴの素材となる品種等を収集し、本格的に研究を始めたのが平成20年。「熊本県農業研究センター」では、株の間隔や温度管理、施肥管理など、年間5000株もの苗で栽培検討し、食味や果形、育てやすさなどを厳しくチェックしていきました。
「研究開発中は、一日300個くらいイチゴを食べていましたね」と苦笑いする田尻さん。有望系統を絞り込む作業を続けて4年。気の遠くなるような試行錯誤を重ねて残った候補は、数万株の中から選りすぐられた5系統でした。

選りすぐられた5系統
さらに、一つ一つの株を根気強く観察

選りすぐられた5系統を、さらに生育条件を様々に変えながら育てていくうちに、田尻さんたち研究チームは「このイチゴはいける!」と、「ゆうべに」に対して直感的に思ったそうです。「当たり前のことですが、勝負はイチゴそのもののおいしさです。このイチゴは生育条件が合わなくて力を出し切っていないのか、それとも十分力を出し切ってこの食味なのかを、しっかりと見極めなくてはなりませんでした。『ゆうべに』には、他のイチゴにはない大きな伸びしろを感じたんです」。その時のことを“直感”という言葉で語った田尻さんでしたが、それは田尻さんたち研究チームが何万株もの苗と必死に向き合い続けた結果、『ゆうべに』の可能性を見い出し、信じることができたのではないでしょうか。

一つ一つの株を根気強く観察

想いは一つ
開発する者と生産する者

開発のプロセスでは、うまくいかない事例もたくさん経験し、心が折れそうになることも。そのたびに研究チームは、JAや生産者の皆さんと、とことん話し合ったそうです。「“魅力あるイチゴを作りたい”というみんなの想いが一つだったからこそ、乗り越えられました。開発者と生産者が一丸となって作り上げたイチゴという想いが強いですね」と当時のことを振り返ります。

ゆうべに検討会

「ゆうべに」の可能性を最大限に引き出す
ためにさまざまな取り組みを

「ゆうべに」の可能性をさらに追求し、おいしさを引き出すための取り組みは、今も続けられています。農業研究センターにある9棟のビニールハウスだけでなく、阿蘇市(「高原農業研究所」)や八代市(「い業研究所野菜栽培研究室」)など、気候風土の違う場所でも「ゆうべに」のおいしさを最大限に引き出すための栽培方法を研究しています。営農指導員や生産者などを交えて「ゆうべに検討会」を行ったり、毎月、普及組織を中心に農業研究センターの研究員も圃場に出向き、生産者とともに考え、細やかなアドバイスを行い、「ゆうべに」にとって最適な栽培環境を作り上げています。
2015年は、18戸の生産者が「ゆうべに」づくりに取り組み、クリスマスシーズンを控えた11月から、東京、大阪、名古屋などに初出荷しました。「来年は出荷数も増えますので、『ゆうべに』のおいしさを全国の皆さんに味わっていただけると思います。楽しみにしていて下さい」と田尻さんは語ります。

現場スタッフとの打ち合わせ

「ゆうべに」本来のおいしさを引き出すために、電照の時期や時間、温度や水分管理などを細やかに調整

次に着手したのは、「ゆうべに」本来の特長を最大限に引き出すための環境作りです。その工夫の一つが「電照栽培」です。イチゴの生長は、温度と日長に影響されますが、温度管理だけで生長をコントロールするのは容易なことではありません。そこで夜間に光を当てることで夜の時間を短くして、イチゴの生育を促す栽培を試みました。
熊本イチゴのブランドである「ひのしずく」の研究開発にも深く関わった田尻さんでしたが、「イチゴの可能性を引き出すための方法は、品種によって違います。『ひのしずく』での体験は、『ゆうべに』には通用しませんでした」。
電照の時期や時間、室温、地温、水分量、株間などを変え、草高、葉色などを細かくチェック。「ゆうべに」がおいしく実るための最適な環境作りに、あきらめることなく挑戦しました。その結果、食味や形のよさはもちろん、11・12月の高い需要期に安定的に出荷できる「ゆうべに」の栽培方法にたどり着きました。

※「ゆうべに」とは?「ゆうべに」は、熊本県が開発したイチゴ新品種の愛称です。大玉で甘さと酸味のバランスがよいのが特徴です。需要が高まる11〜12月の収穫量が多く、翌5月まで安定的に出荷されます。この愛称は、全国から寄せられた5178通の応募の中から選ばれました。熊本の「熊(ゆう)」と、イチゴの「紅(べに)色」を合わせ、華やかさと上品さをイメージしています。
取材日 平成27年12月7日

熊本県農業研究センター
http://www.pref.kumamoto.jp/hpkiji/pub/List.aspx?c_id=3&class_set_id=1&class_id=1287
野菜王国くまもと「ひのしずく」紹介ページ
http://www.kumamoto-sskk.jp/elaborately/no14.php
http://www.kumamoto-sskk.jp/elaborately/no3.php