毎年5000種もの苗を育てて4年
「ゆうべに」の研究開発が始められたのは、平成17年のこと。前年には熊本イチゴのオリジナル品種「ひのしずく」が誕生し、市場で高い評価を獲得して、ますます熊本イチゴへの期待が高まりました。そこで熊本県では「ひのしずく」と並ぶような独自のブランドで新たな特徴を持ったイチゴ新品種の開発に着手しました。 |
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新品種イチゴの素材となる品種等を収集し、本格的に研究を始めたのが平成20年。「熊本県農業研究センター」では、株の間隔や温度管理、施肥管理など、年間5000株もの苗で栽培検討し、食味や果形、育てやすさなどを厳しくチェックしていきました。 「研究開発中は、一日300個くらいイチゴを食べていましたね」と苦笑いする田尻さん。有望系統を絞り込む作業を続けて4年。気の遠くなるような試行錯誤を重ねて残った候補は、数万株の中から選りすぐられた5系統でした。 |
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選りすぐられた5系統
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![]() 「ゆうべに」本来のおいしさを引き出すために、電照の時期や時間、温度や水分管理などを細やかに調整次に着手したのは、「ゆうべに」本来の特長を最大限に引き出すための環境作りです。その工夫の一つが「電照栽培」です。イチゴの生長は、温度と日長に影響されますが、温度管理だけで生長をコントロールするのは容易なことではありません。そこで夜間に光を当てることで夜の時間を短くして、イチゴの生育を促す栽培を試みました。熊本イチゴのブランドである「ひのしずく」の研究開発にも深く関わった田尻さんでしたが、「イチゴの可能性を引き出すための方法は、品種によって違います。『ひのしずく』での体験は、『ゆうべに』には通用しませんでした」。 電照の時期や時間、室温、地温、水分量、株間などを変え、草高、葉色などを細かくチェック。「ゆうべに」がおいしく実るための最適な環境作りに、あきらめることなく挑戦しました。その結果、食味や形のよさはもちろん、11・12月の高い需要期に安定的に出荷できる「ゆうべに」の栽培方法にたどり着きました。 ![]() |
取材日 平成27年12月7日 |
熊本県農業研究センター |