熊本県のトマト農家である山住昭二(やまずみしょうじ 54歳)さんは、干拓地の堤防に立ち目の前に広がる八代海を眺めていた。
祖父がこの地に単身移り住んだのは昭和2年のこと。
干拓地であるがゆえに作物が実らず苦労を重ねた祖父は「作(さく)つくれ、土つくれ、人つくれ」と言い続けた。
今、160アールの土地で息子夫婦とともにトマトを作り続ける山住さんは、今も時折この堤防に立ち、祖父の声に耳をすますのだという。
祖父が拓いたこの土地でトマトと向き合う「今日はくたーっと疲れとるなあ、とか、今日は艶があって元気やわとか、葉っぱを見ればその日の調子がすぐわかります」 さらに喜ばれるトマトづくりを目指して「自然相手の仕事ですから、農業とがっぷり四つに組んで相撲をとる覚悟でやっとります」と語るご主人の昭二さん。毎日毎日の愛情の積み重ねが、太陽の赤を溶かし込んだようなみずみずしくおいしいトマトを育むことを知っているからです。 跡継ぎとして一緒に働く息子の武士(たけし 31歳)さんや若嫁の知子(ともこ 31歳)さんとともに、さらに愛されるトマトづくりを目指し新しい可能性にチャレンジを続けています。 「“作つくれ、土つくれ、人つくれ”。作物を育てるのに大事なのは、土づくりと人づくり。息子夫婦にもこの気持ちをいつまでも忘れないで欲しいですね」 ☆(注)芽かぎ。栄養が分散せず、まっすぐ伸びるように、横に出た不要な芽を取る作業 |
取材日 平成21年9月25日 |